Lieselotte Jakob [Dresden]

Rudolf Eichner [Dresden]

 


photo: Will Robb

東京での展覧会開催以来、長崎の被爆者たちからは、長崎での開催を望む声があった。単なる巡回展の受け入れではなく、アートプロジェクトならではの自発的な関わりをテーマに呼び掛けが続けられた。

2010年7月、プロジェクトは浅草から長崎へ引き渡され、ミュージアム、企業、協会、有志ボランティアなど、組織の枠を超えた協力を得て『FROM ABOVE in 長崎』開催。再び大きな反響を呼ぶ。主旨に賛同したミュージシャンらによるライブイベント『SOUND FROM ABOVE(空から降る音色)』も開催された。

8日間の長崎滞在中に、ノーベル平和賞候補の山口仙二氏を含む8名を撮影。東京に戻り広島被爆者2名を撮影。「今を逃したらいつまた会えるかわからない」不安定な体調を押して被爆者たちはカメラの前に立った。
2010年11月、初めて扉が開かれた広島へと向かった。残された時間は少ない。

 

2011年2月、ドレスデンと東京、二つの大空襲被災者たちの肖像が一堂に会す。『FROM ABOVE: DRESDEN/TOKYO』と題し、ドイツ・ドレスデンと東京・浅草のギャラリー・エフで同時開催。
1945年2月13日、古都ドレスデンを焼き尽くした大空襲(犠牲者の数は未だ不明)、翌3月10日、10万人の命を奪った東京大空襲。そして惨劇は8月の広島、長崎へと続き、人々の青空を奪った。
世界中の人々の頭上、その空が平安であるようにという希望が、プロジェクトのタイトルには込められている。サヴィアーノは言う。「50年後の世界のどこかに、新たな被災地で『彼ら』を訪ね歩く写真家がいないことを願っている」

世界平和のため、個人に何ができるか。祈りは世界を救うのか。サヴィアーノのアートはそのような使命を背負っていない。写真家としての本質的な衝動に従って、ただ目をそらさないだけである。プロジェクト『FROM ABOVE』における彼の写真行為は、限られた時間の緊張と、人間同士の出会いがもたらす優しい奇跡とを示し、まさに私たちの足もとに埋もれている「歴史」との接点を生み出す。そこに焼き付けられているのは、世界が失ってはならない「個人」の物語である。

 

END