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2007年 2月1日(木)〜18日(日)
mitsuo 4冊のスクラップブックから
写真

参加写真家|石井孝典、塩澤秀樹
デジタルプリント協力|堀内カラー
テキスト寄稿|いしいしんじ

企画制作 (C) ギャラリー・エフ

 写真文化は今、デジタル隆盛の時代を迎えています。カメラはフィルムから解放され、カメラ付き携帯電話の普及は写真撮影をごく日常的な行為としました。デジタル化によって撮影のコストは安価になる一方で、写真をプリントし、保存する動機は希薄になっています。写真を撮り、撮られ、残していく意味は確実に変化しているのです。
 2006年夏、東京のある旧家から4冊の古いスクラップブックが発見されました。収められていたのは50年以上前に撮影された大量のネガとプリント。撮影者は37歳の若さでこの世を去ったひとりの青年でした。彼は中判カメラを使いながら、家族の肖像を中心に昭和30年前後の情景を撮影し、その1コマ1コマをスクラップブックに整理していました。展覧会『mitsuo〜4冊のスクラップブックから〜』は、彼が遺したネガとプリントを題材に写真展を構成することで、写真の過去と現在、そして未来をつなぐ試みを行います。
 まず、石井孝典と塩澤秀樹の二人の写真家がこのネガを手作業によってプリントします。手焼きプリントを重要な表現手段として位置づける彼らは、色褪せた写真から得た衝動を、写真表現の基本的な行為である暗室作業によって表現します。ネガの存在しない小さなプリントについては写真現像の専門企業である堀内カラーが最新の「ラムダプリント」によって出力。先端のデジタル技術と極めて精細なレーザープリンタを駆使し、50年以上前に焼き込まれた世界を再生します。
 本展覧会は、ある無名の人物が半世紀前に撮影した写真を、現代に生きる写真の専門家たちがプリントによって再表現することで、「写真とは何か」を問う試みです。

情報掲載
読売新聞|朝日新聞マリオン|東京新聞|日経新聞

 

石井孝典(いしい たかのり)
写真家。1968年大阪生まれ。人物ポートレートを中心に雑誌や広告で作品を発表。深みのある描写力には定評があり、雑誌『Number』では国内外の数多くのアスリートたちの撮影を担当、表紙写真を手がけることも多い。ここ数年はトルコの国技である格闘技「ヤールギレシュ(オイルレスリング)」の全国大会を定期的に撮影している。

石井孝典写真展『EDIRNE』(2007.06)>>

塩澤秀樹(しおざわ ひでき)
写真家。1962年東京生まれ。人物写真での評価は高く、1996年から2004年にかけては雑誌『Yahoo Japan Internet Guide』(ソフトバンクパブリッシング)の表紙撮影を担当する。近年は、女性指揮者・西本智実氏や歌手・小椋佳氏の撮影を手がけ、CDジャケットや広告などでその作品が起用される。写真集に『指揮者・西本智実』(ソフトバンクパブリッシング)がある。

塩沢秀樹 >>

堀内カラー(ほりうちからー)
1959年設立の写真現像会社。プロフェッショナル向けのラボとして、多くの写真家たちから信頼されている。1993年より同業他社に先駆けていち早くデジタル画像処理を開始、1999年にはデジタルイメージングセンターを開業。2000年にアーカイブサポートセンターを開業し、デジタル技術を駆使した写真の保存記録のノウハウを構築、現在は政府機関などのアーカイブ事業も手がけている。

いしいしんじ
作家。1966年大阪生まれ。京都大学文学部仏文科卒。2000年、初の長篇小説『ぶらんこ乗り』(理論社)を発表。2003年、『麦ふみクーツェ』(理論社)で坪田譲治文学賞受賞。主な著作『プラネタリウムのふたご』(講談社)『ポーの話』(新潮社)『みずうみ』(河出書房新社)など。

いしいしんじのごはん日記 >>

展示風景

 

作家・いしいしんじによる寄稿